ヨーロッパの空はなぜ低い?
フランスに来て気づいたことなのですが、こちらの空は日本と比べてなんとなく低い位置にある気がするのです。
正確には、空の位置ではなく雲の位置が低い、なのですが。
ヨーロッパの雲は空気感はあるのですが、雲の一番下の位置が低い場所にあり、そのせいか太陽の光を通さず陰影になっているものが多いなという印象でした。雲に手が届きそうな時もあります。
パリの空です。どうでしょう、日本の空よりも雲がずっと低く見えませんか?
昨夏、モネが晩年を過ごしたジヴェルニーに行ったのですが、その際に見た雲が印象派の絵で親しんだ雲の形とそっくりで、とても感動を覚えたのをはっきり記憶しています。ああ、モネ達は本当にこの雲を見て絵を描いていたんだなぁ、と。
ジヴェルニーの睡蓮の池の前で撮った写真です。
オルセー美術館で撮った印象派絵画の写真。ね、雲の感じがそっくりでしょ?
ヨーロッパでは雲の位置が低い、というのは気のせいかなとも考えていたのですが、どうやら気象学的にしっかりとした理由があるようなのです。
空、つまり大気圏は、対流圏、成層圏、中間圏、熱圏、外気圏に分かれています。このうち、雲ができる部分は、地面に一番近い「対流圏」です。対流圏と成層圏の境界領域は対流圏界面と呼ばれるのですが、この対流圏界面ができる場所が緯度によって変わってくるそうなのです。
対流圏界面ができる高さは、上昇気流などの気象条件によって決まります。緯度が低いとそれだけ暖かいですから、地表の気温により上昇気流が強く起こり、対流圏界面が押し上げられます。緯度が高い寒い場所では、それとは逆に界面が下がります。
つまり、対流圏界面は赤道に近いほど高く、北極・南極に近いほど低いということです。赤道付近では対流圏界面は地表から14kmほど、極地方では8kmほどの場所にでき、もちろん季節によって変動はしますが6kmも違いがあります。
ちなみに、日本とヨーロッパの緯度は同じくらいと思ってる方も多いかと思いますが、実はヨーロッパの方がかなり北寄りです。パリは北緯49度、東京は北緯35度です。札幌ですら北緯45度ですから、北ヨーロッパは日本よりずっと極地方に近いのですね。東京都同緯度なのは、ヨーロッパの一番南端、ギリシャあたりになります。
なので、緯度の高いヨーロッパの対流圏界面は、緯度が低い東京よりもずっと低いところにあるのです。上述した通り対流圏というのは雲ができる領域、対流圏界面は雲ができる上限になりますから、ヨーロッパでは東京より雲が低い場所にできるということです。
なんとなく感じていた雲の低さ、科学的にちゃんと説明がつくものだったのですね。